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電気シェーバーのリチウムイオンバッテリー寿命を長持ちさせるポイント


braunシェーバーのバッテリー表記

多くの電気シェーバーに搭載されるリチウムイオンバッテリー(Li-Ion)は、ニッケル水素電池(Ni-MH)の欠点であったメモリー効果がほとんど無く、いつでも継ぎ足し充電を行うことができます。

ですが、毎回のように電気シェーバーを充電していると寿命が縮まるのでは?と思う方も多いはず。

このページではリチウムイオン電池搭載の電気シェーバーに関する疑問や、寿命を長持ちさせるポイントなどを解説していきます。

リチウムイオン電池の充電サイクル

リチウムイオン電池は約500回の充電サイクルが寿命だと一般的に言われています。

こう聞くと「電気シェーバーは500回充電したら寿命なの?」と思う方も多いかもしれません。ですが、500回の充電で寿命というのは間違いです。

リチウムイオン電池のサイクル寿命は1回の充電で1サイクルと計算するのではなく、バッテリー残量を100%消費した時点で1サイクルとカウントされます。

文章だけだと少々イメージしづらいかもしれませんね。以下の充電サイクルのイメージ図をご覧ください。

*充電サイクルに関する記述はAppleのサイトが非常に参考になります。

充電サイクルのイメージ図

リチウムイオン電池の充電サイクル

【1日目】100%充電した電気シェーバーを翌日25%放電し、使用後に充電。

【2日目】35%放電し、使用後に充電。

【3日目】40%放電し、使用後に充電。

図のように、合計消費が100%になった時点で充電回数は1回とカウントされます。

シェーバーを充電する様子

例えば、100%充電して50分間使用できる電気シェーバーで、毎朝10分間使用すると仮定してみましょう。すると、毎日約20%ずつ放電し、約5回で100%放電する計算になります。

つまり5日間で1回の充電サイクルですので、一年間で約73回の充電サイクルが訪れます。もし5日に1回の充電ペースで500回の充電サイクルに到達するには約7年掛かることになります。

365(日)÷5(回)=73(回) 
500(回)÷73(回)=6.84931....(年)

もちろん、500回の充電サイクルに到達したからといって501回目からは充電できず使用不可になるわけではありません。サイクル数に従って徐々にバッテリー容量(使用時間)が減っていきます。

*充電サイクル以外にも周囲温度や保存状態などの要因もバッテリーの健康状態を左右します。

充電サイクル回数とバッテリー寿命の関係

移動端末用リチウムイオン電池の容量劣化特性

竹野, 和彦, and 代田. "移動端末用リチウムイオン電池の容量劣化特性." (2006): 62-65.

図は100%充電・放電を1サイクルとして、そのサイクルを繰り返した場合の放電電圧カーブ図です。1サイクル目で60分以上使用可能であったバッテリーも、サイクル数が600回を超えたあたりから放電時間(バッテリーが空になるまでの時間)が短くなっています。

つまり、購入当初は60分使用可能だった電気シェーバーもサイクル数を重ねるごとにリチウムイオン電池容量は劣化し、50分、40分と徐々に短くなっていきます。

移動端末用リチウムイオン電池の容量劣化特性

竹野, 和彦, and 代田. "移動端末用リチウムイオン電池の容量劣化特性." (2006): 62-65.

放充電サイクルの図においても600サイクルを超えると電池容量は減っていき、約800サイクルで電池容量(%)は半分以下になることがわかります。

このように充電サイクル数によるリチウムイオン電池の特性が、「充電が半分しか持たなくなった」と感じる理由のひとつです。

スマートフォンなどをヘビーに使用する方は1日で100%使い切ってしまうため、2年程度で600サイクルに到達し購入から早い段階でバッテリーが持たなくなるケースがあります。

電気シェーバーの場合、朝に10~20分使用するだけでしょうから1日の使用容量は多くとも10~20%、リチウムイオン電池の容量低下が現れるサイクル数に到達するには年数がかかります。

たまに、電気シェーバーを5年や10年と長く使用していて「まだバッテリーは充電できる。モーターが壊れるまで買い替える必要なんて無い」なんて人を見かけますが、間違いなくリチウムイオン電池搭載のシェーバー使用者です。実際に我が家にもかなり古いNationalシェーバーがありますが、未だにフル充電で2、30分ほど駆動します。

このように、充電サイクルだけをみるとリチウムイオン電池搭載の電気シェーバーは非常に高寿命だと言えます。

その一方で、1~2年ほどで「バッテリー持ちが悪くなった」と感じる人もいるはず。それは、充電サイクルの他にもリチウムイオン電池の寿命を縮めてしまう要因がいくつか存在するためです。

使用方法によっては通常より早くリチウムイオン電池の劣化が進んでしまうこともあるため、バッテリー寿命を長くするポイントを確認してみましょう。

購入時にフル充電されていない理由

電気シェーバーに限らず、家電などを購入し箱を開け、いざ使用しようとした時に「なぜフル充電されてないの?!」なんて経験はないでしょうか?どうせならフル充電してくれればいいのに、ケチだな。と思われるかもしれませんが、これには理由があります。

実は、リチウムイオン電池は満充電での保存が推奨されていないのです。メーカー出荷時点のバッテリー容量は数%~50%程度が一般的。意外かもしれませんが、フル充電(100%)された状態での保存はバッテリーに負荷がかかり劣化が進んでしまいます。

メーカー出荷時からユーザーの手元に届くまでバッテリー健康状態を保つ意味でも、充電状態は数%から多くとも50%程度になっているはずです。

では、実際に電気シェーバーを使用する場合は充電の際にどのようなことに気を付ければ良いのでしょうか?

まずは以下のグラフ図をご覧ください。

バッテリーがフル充電状態からの使用は早く寿命ラインを迎える

小形リチウムイオン電池の寿命特性

市村 雅弘. "小形リチウムイオン電池の寿命特性." (2005): 19-23

上のグラフ図(市村 雅弘. "小形リチウムイオン電池の寿命特性." (2005): 19-23)から、リチウムイオン電池は100%~50%の状態で使用する場合のほうが、0%~50%で使用する場合よりも早く寿命ラインに達していることがわかります。

電気シェーバーの場合、髭剃りに掛かる時間にも左右されますが、おおよそ1回の使用でバッテリーは10~20%ほどしか消費しません。使用する度にフル充電(100%)するのではなく、3日~1週間に1回ほどの充電が理想的といえます。*使用環境による個人差はあります。

とはいえ、自動充電洗浄器などにセットするとシェーバーは勝手にフル充電されてしまいます。毎日気軽に清潔な状態を保てるメリットはありますが、もしバッテリー寿命をできるだけ伸ばしたいと考えるならば自動充電洗浄器の使用も3日に1回ほどにするのが良いでしょう。

満充電(100%)の状態から使用する回数をなるべく減らす、ということがバッテリー寿命を伸ばすコツです。

デジタルタイマーで常に50%の充電状態を維持

究極的にリチウムイオンバッテリーの健康状態を保つのであれば、デジタルタイマーなどでフル充電される前に電源を切るといった方法も考えられます。1時間でフル充電の電気シェーバーの場合、タイマーで約30分後に充電が切れるようセットしておくことでおおよそ50%の充電状態を維持することができます。

ただし、メーカー側では充電途中でプラグを抜いたりする行為は推奨していないため自己責任にて行って頂くようお願いいたします。特に、自動充電洗浄器などは途中で電源を切ってしまうと洗浄システムがエラーを起こすためお薦めしません。

また、毎回充電スタンドに立てかける使い方をしている場合は節電タップも有効です。いちいち電源コードを抜くこと無くスイッチを切るだけで、立てかける度に充電が行われてしまうことを防ぐことができます。

デジタルタイマー節電タップ

 

リチウムイオン電池は高温になるほど劣化が進む

リチウムイオン蓄電システムを開発するBAYSUNによると、以下のような見解が公式ホームページに載せられています。

リチウムイオン電池は保存状態により劣化の程度が変化します。満充電に近く、保存温度が高いほど容量劣化が大きくなります。 たとえば充電量が30%以下で、保存温度が15℃以下であれば、1年間の保存でも数%の容量劣化で収まります。 一方、満充電で45℃で保存すると、6ヶ月でも場合によっては60%程度の容量レベルにまで劣化することもあります。

12. メモリー効果と継足し充電 - ベイサン http://www.baysun.net/ionbattery_story/lithium12.html

リチウムイオン電池は高温になるほどバッテリーの劣化が進みます。電気シェーバーをしばらく使用しない場合は30~40%まで放電させ、できるだけ温度の低い場所で保管することをおすすめします。また、充電残量が0(完全放電)のまま放置することも、劣化が進む要因となるため避けましょう。

持ち運びにも便利な電気シェーバーは、車のダッシュボードなどに置くケースもあるかと思います。ですが、高温の環境下ではリチウムイオン電池の劣化は進んでしまいます。夏場などは超高温になり最悪の場合、バッテリーの発熱や発火の危険もあるため気をつけて下さい。

お風呂剃りシェーバーはどう扱えばいいの?

リチウムイオン電池の特性

http://lifehacker.com/5875162/how-often-should-i-charge-my-gadgets-battery-to-prolong-its-lifespan

高温は避けるべきとはいったものの、最近ではお風呂剃りシェーバーも主流になっています。お風呂剃り対応シェーバーはIPX7基準*を満たしていることから浴室でT時カミソリ使用するような感覚で使用でき、本体にシャワーのお湯が掛かる場面も多いかと思います。

*:社団法人日本船舶品質管理協会 製品安全評価センターにてIPX7基準(水深1メートルに30分間水に浸けても有害な影響を生じる量の水の浸入がない)検査をクリア。

防水シェーバーですので水がかかること自体は問題ありません。ですが気になるのは温度です。構造や季節にもよりますが、シャワー浴をすれば浴室は22℃~28℃程度まで上がります。湯船にお湯を張っている際はさらに室温も上がりやすくなります。

お風呂剃り対応シェーバー

室温の高い浴室での使用や、40℃近いシャワーのお湯はリチウムイオン電池にとってあまり好ましい環境とは言えません。電気シェーバーを浴室に持ち運ぶことが多い場合はどうしてもバッテリーが劣化しやすいと言えます。

ですが、バッテリー寿命を気にして快適なお風呂剃りを控えてしまうというのも本末転倒です。

熱いシャワーが本体に長時間掛かるようなことは避けたり、浴室にシェーバーを放置するのを避けるといった点に注意するだけでも、お風呂剃りシェーバーのバッテリー寿命は延びます。

また、使い終えたらシェーバーは温度の低い脱衣所へ出してしまうというのも、少々面倒ですが1つの手です。

 

【まとめ】電気シェーバーのバッテリーを長持ちさせる3つのポイント

ニッカド電池やニッケル水素電池にくらべ高寿命化したリチウムイオン電池。現在ではノートPCやスマートフォンなどのモバイル機器からハンディクリーナーやロボット掃除機、電気自動車やドローンなどあらゆる製品に搭載されています。

あまり劣化の進行に神経質になりすぎる必要もないとは思いますが、特性を知っておくとよりバッテリー寿命も伸ばすことができます。

長く製品を愛用するためにも以下の3つを抑えた使い方を意識してみましょう。

①使うたびにフル充電するのではなく、適度に残量が減ってから充電する。

毎日フル充電し100%の状態を維持してしまうと負荷も大きく、普通より早く寿命ラインに到達してしまいます。

使う度にフル充電より、充電残量が心持たなくなってきたタイミングで充電するようにしましょう。そのほうが自然と低残量状態をキープしやすく、寿命ラインを大きく先送りすることができます。

髭の濃さでシェービングにかかる時間は人によって異なりますが、1時間使用可能なシェーバーで毎日10分剃るとすれば、目安としては5~6日に1回の充電が理想です。

②満充電での放置を避ける。

フル充電状態での長期保存はリチウムイオン電池の劣化を早めます。

長期間シェーバーを使用しない際は、3~40%まで放電させ、できるだけ温度の低い場所で保管しましょう。また、充電残量が0のまま放置することも劣化の原因となるため避けましょう。

③高温になる場所には置かない。

シェーバーは直射日光やヒーターの熱があたる場所への放置は絶対に避けましょう。熱によるバッテリー劣化だけでなく、シェーバー本体が変形する恐れもあります。

 

リチウムイオンバッテリーに関する参考ページ


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